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Rosa eglanteria #01 2007.06.07
「甘い荊 1」


苦い匂いを香らせる葉に手を翳し小さな火を灯す。
一つ大きく吸い込み口から入る煙と鼻を擽る独特の匂いを確かめた後
緩慢な動作で吸ったものを外へ吐き出す。
外へ放り出された煙は目を燻そうと懸命に這い上がっていった。
その動きを口角を上げ面白そうに蔑む様に眺める。

多少、毒気の強い煙草。
多少がどの程度かは吸ったものにしか分からないだろうが
少なくとも通常の人間(と分類される種)には
その副流煙が皮膚に触れただけでも気分が悪くなるという。

故に、彼が煙管でこの煙草を吸うのは一人でいる時のみである。
それは他人を気遣っている優しさの現われにも見えるが
実際は単に一人でいる方が自然であることと
無用な他人とのイザコザを無駄と思っているからに過ぎない。

もちろん、狡猾な獣は表面上は辛辣さを持ちながらも社交的ではある。
己にとって利となるものならば徹底的に利用する。
そのために笑顔が必要ならば笑い、時には泣くこともある。


彼は獣なのだ。
獣に感情はない。


だが彼は気高く理知を憶えた獣であった。



彼がこの島に来た理由はと言えば、他とは趣が異なるかもしれない。
推測するに、多くの者(時に物)は「この島に眠る財宝を求めて」来島したのだろう。
だが彼にとって”素直に信じる者だけが手にできる財宝”という
存在の真偽そのものが確かではないものに興味など無い。


目的は、ただ一つ。

全ては”彼女”のため。
獣に理知を与えた”彼女”のため。



煙を眺めることに飽きると
少しの名残惜しさも無しに携帯用の灰皿に葉を落とす。
二、三度面倒くさ気に瞬きをすると南国の空が目に映りこむ。

それは”彼女”の瞳と違い遠慮を知らない青さで目に余る。
煩わしく目を細め煙管と灰皿を懐に仕舞うと
遠くからここ最近に聞き慣れた声が流れてきた。

これからこの島で出会い手を組んだ者達と島の地下へと潜る。
彼にとっては時が来るまでの暇を楽しむことでしかないが
程よい危機感を得られ闘争本能を擽られるのなら悪くは無い。

声を聴覚として捉えると面倒臭そうに立ち上がる。
もう一度変わらない色の空を見上げると口角もすらりと上げた。


―オ前ニ終ワリヲ見セテヤロウ

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